「原子力発電は暴走すると危険。」
そんな言葉を耳にすることがある。
しかし、「暴走」とは具体的に何を意味しているのだろうか。
実は、原子力発電における「暴走」には二つの異なる意味がある。一つは核分裂の連鎖反応が制御できなくなること。もう一つは発生した熱を冷却できなくなることだ。
この二つは原因も対策も異なる現象だが、どちらも原子力発電の安全性を考える上で欠かせない要素である。
一つ目の課題は、連鎖反応を制御すること
原子力発電では、ウラン原子が核分裂することで熱を生み出している。
核分裂が起こると熱だけでなく中性子も放出され、その中性子が別のウラン原子に当たることで、さらに核分裂が起こる。
この連鎖反応によって発電に必要なエネルギーを継続的に生み出している。
しかし、この反応は放っておけば際限なく増えてしまう可能性がある。
もし中性子が想定以上に核分裂を引き起こせば、発熱量も急激に増加してしまう。
そこで原子炉では、制御棒などを用いて中性子の数を調整し、核分裂の回数を一定に保っている。
つまり、原子力発電は「核分裂を起こす技術」であると同時に、「核分裂を必要なだけ起こし続ける技術」でもある。
二つ目の課題は、熱を制御すること
一方で、核分裂によって生まれるのは熱である。
その熱を取り出して蒸気を作り、タービンを回すことで電気を生み出している。
しかし、発生した熱は常に取り除かなければならない。
運転中はもちろん、原子炉を停止した後も安心はできない。
核分裂を止めても、燃料の中には放射性物質が残り続ける。これらは崩壊する際に熱を発生させるため、停止後もしばらくは冷却を続ける必要がある。
この熱は崩壊熱と呼ばれ、停止直後でも原子炉出力の数%程度に達する。
もし冷却設備が停止し、この熱を逃がせなくなると、燃料の温度は上昇し続ける。
その結果、
- 燃料被覆管の損傷
- 炉心溶融(メルトダウン)
- 放射性物質が外部へ放出される危険性
へとつながる可能性がある。
つまり、核分裂が止まっていても、「熱」は止まっていないのである。
二つの制御がそろって初めて安全になる
原子力発電の安全性は、しばしば「核分裂を止められるか」という点だけで語られがちだ。
しかし実際には、それだけでは十分ではない。
連鎖反応を適切に制御すること。
そして、発生した熱を確実に冷却し続けること。
この二つが同時に機能して初めて、安全な運転が実現する。
どちらか一方だけでは、原子力発電所を安全に運転することはできない。
原子力発電は「二つの暴走」と向き合う技術
「暴走」という言葉だけを聞くと、一つの現象を思い浮かべてしまう。
しかし実際には、
- 連鎖反応が制御できなくなること。
- 発生した熱を冷却できなくなること。
という二つの異なる課題が存在する。
現在の原子力発電所では、それぞれに対して異なる安全対策が講じられ、多重の仕組みによって事故を防ぐ設計が採られている。
原子力発電とは、単に大きなエネルギーを生み出す技術ではない。
連鎖反応を制御し、熱を制御する。
この二つの制御を絶えず続けることで初めて成り立つ技術なのである。
「暴走」という言葉の裏側には、この二つの制御技術が存在することを知ると、原子力発電という技術をより立体的に理解できるのではないだろうか。
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