私たちは普段、何かを取引するとき必ず誰かを信用している。
銀行にお金を預けるのは銀行を信用しているから。
ネットショッピングが成立するのは運営会社を信用しているから。
役所の証明書に価値があるのは国を信用しているから。
つまり、これまでの社会は「中央で管理する誰か」を信頼することで成り立ってきた。
では、その管理者がいなくても信用できる仕組みは作れないのだろうか。
その問いに対する一つの答えが、ブロックチェーンという技術だ。
ブロックチェーンとは何か
ブロックチェーンを一言で表すなら、
「世界中で共有・管理する改ざんが非常に難しいデジタル台帳」
である。
通常のデータベースでは、一つのサーバーがデータを管理している。
しかしブロックチェーンでは、世界中の多くのコンピュータが同じ台帳を共有し、それぞれが内容を保存している。
この参加しているコンピュータをノードという。
一台が故障しても他のノードが同じ情報を持っているため、システム全体は動き続ける。
なぜ「ブロックチェーン」と呼ばれるのか
取引データは一定量ごとにまとめられ、「ブロック」という単位になる。
そして、それぞれのブロックは前のブロックとつながりながら保存されていく。
まるで鎖のようにつながることから、「ブロックチェーン」と呼ばれている。
ただし、ここで誤解しやすいポイントがある。
新しいブロックは、前にあるすべてのブロックの情報を持っているわけではない。
実際に持っているのは、直前のブロックのハッシュ値だけだ。
ハッシュ値とは「データの指紋」
ハッシュ値とは、データから計算される固定長の文字列である。
人間でいう指紋のようなもので、元のデータがほんの少しでも変わると、まったく違う値になる。
そのため、もし過去のブロックが改ざんされれば、そのハッシュ値も変わってしまう。
すると、それを参照している次のブロックとのつながりが切れ、さらにその後ろのブロックにも影響が連鎖していく。
つまり、一つの改ざんがチェーン全体に波及してしまう仕組みになっている。
ノードが支える信頼
ブロックチェーンの台帳は、一台のコンピュータだけが持っているわけではない。
世界中の多くのノードが同じ台帳を保持している。
誰かが自分のコンピュータだけを書き換えても、他のノードが持つ正しい台帳と一致しないため、不正なデータとして扱われる。
つまり、多数のノードがお互いに内容を確認し合うことで、信頼性を維持しているのである。
「改ざんできない」は本当なのか
ブロックチェーンは「絶対に改ざんできない技術」と紹介されることがある。
しかし、これは厳密には正しくない。
正確には、
「改ざんすることが現実的ではないほど難しい技術」
と言った方が近い。
もし過去のブロックを書き換えるなら、その後ろに続くすべてのブロックを作り直し、さらにネットワーク全体に自分のデータを正しいものとして認めさせなければならない。
これは莫大な計算能力やコストが必要になるため、大規模なブロックチェーンでは現実的ではない。
もちろん理論上は、「51%攻撃」のようにネットワークの過半数を支配できれば改ざんできる可能性はある。
つまり、安全性は「絶対」ではなく、「攻撃するコストが得られる利益を大きく上回るよう設計されている」という考え方なのである。
ハッキングと改ざんは別の話
暗号資産が盗まれたというニュースを見て、「ブロックチェーンは危険なのでは」と感じる人もいるかもしれない。
しかし、多くの場合はブロックチェーンそのものが破られたわけではない。
秘密鍵が盗まれたり、取引所がハッキングされたり、プログラムに欠陥があったりと、ブロックチェーンの外側で問題が起きているケースがほとんどだ。
つまり、金庫そのものではなく、鍵の管理や運用方法に問題があったということだ。
信頼の形を変える技術
ブロックチェーンの価値は、暗号資産だけではない。
契約の記録、物流の履歴、証明書の管理など、「改ざんされては困る情報」を扱うあらゆる場面で活用が期待されている。
そして、この技術が目指している本質は、単にデータを保存することではない。
これまで社会は、「銀行を信じる」「企業を信じる」「国を信じる」といったように、人や組織への信頼を前提として成り立ってきた。
一方、ブロックチェーンが実現しようとしているのは、人ではなく仕組みそのものを信頼する社会である。
誰が管理しているかではなく、誰が見ても改ざんが極めて困難なルールで管理されているか。
ブロックチェーンとは、そんな新しい「信用」のあり方を支える技術なのかもしれない。
広告
